人に親切にすることを意味する諺・格言に「情けは人の為ならず」という言葉があります。これは旧五千円札に描かれた、「武士道」を説き世界に知らしめた新渡戸稲造が作った 「一日一言」 の中の詩からきています。人に情をかけるのはその人の為になるだけではなくやがては巡り巡って自分に返ってくるという意味で、類義語には「善因善果」や「陰徳あれば必ず陽報あり」などがあります。今回は亡くなられた方への思いやり、そして親切で優しい気持ちを持っていらっしゃる方々のお話です。
1.東京のある不動産業の方からのお問い合わせ
2.考えさせられる言葉
1.約2年前の寒さが厳しい1月下旬に、その方から「遺骨の納骨先を探しているのですが・・・」と電話があり相談を受けました。不動産業を営んでいらっしゃる方で、丁寧な話し方の奥に気品が感じられます。不動産物件の建物から出てきた全く関係のない他人の遺骨ですが、処分してしまうのはその人の生きてきた証を消してしまうことになるので人として許せない、何よりも気が引けるし、せめて供養だけでもという慈悲深い優しいお気持ちが言葉から伝わってきました。
全く知らない他人の遺骨を供養するという行いは中々できることではありません。本当に素晴らしいことです。
それ以降、物件から出てくる遺骨や位牌、ペットの遺骨など、納骨だけでなく位牌供養であったり形見供養であったりその都度自費で申し込みされてます。
2.ある時、世田谷の物件から骨壺が出てきていつものように納骨の申込みをされたので、「世田谷というと皆さんお墓を持っていらっしゃるイメージがありますが・・・」とお聞きすると「そうでもないの」と即答で返ってきました。「相続人にもよるけど家財や遺骨も含めて全て処分して という人も結構いるの」と教えて頂きました。
最近はお葬式の後、遺骨を自宅に置きたくないのでそのままお墓へ埋葬する人が増えているそうですが、自宅に遺骨を保管せざるを得ないリアルさが垣間見れた瞬間でした。
写真はその方が申し込まれた形見供養が行われたときの様子です。この時は故人である姉妹お二人の卒塔婆と形見のネックレス類を添えて供養が行われました。申込者の方はきっとほっとされたと思いますし、協力頂きました住職さんには本当に感謝致します。情けは人の為ならず、正にこの言葉がピッタリ合う事例でした。
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